「座る」ということにも柔軟 ②大正時代から昭和・平成・令和まで

片付けの伝道師
安東英子先生認定
美しい暮らしの空間アドバイザー
小野 美和子
安東流
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日本人には、外国文化と自国の文化を融合させる柔軟性があります。
明治時代以降、生活が洋風化していく中で、住宅もおなじ方向をたどりました。

しかし靴を脱いで家にあがる習慣は変わりません。
そのため座る場所として、イスとユカが共存する形になりました。

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イス式にするべき

大正時代初期「住宅改善に関する六大鋼領(ろくだいこうりょう)」が決定されます。

その第一項目に「椅子式に改めること」が記されています。

理由として、床座式の生活は非効率的で時間を浪費し、衛生面や体にも良くないことがあげられ、世界共通の生活様式である椅子式の生活にすべき、とされました。

住宅改善に関する六大鋼領(大正9年)

「住宅改善に関する六大綱領(こうりょう:政策や方針などの基本を示したもの)」

  1. 本邦将来の住宅は斬次( ぜんじ:しだいに、だんだん ) 椅子式に改めること
  2. 住宅の間取設備は在来の接客本位を家族本位に改めること
  3. 住宅の構造及び設備は虚飾(きょしょく:実質が伴わず、外見ばかり飾ること)を避け衛生並びに防火等実用に重きを置くこと
  4. 庭園は在来の鑑賞本位に偏らず保健防火等の実用に重きを置くこと
  5. 家具は簡便堅牢(かんべんけんろう:手軽で便利、しっかりして壊れにくいもの)を旨とし住宅の改善に準じること
  6. 大都市では地域の状況により共同生活および田園都市の施設をも奨励すること

15年という短い大正時代が終わったのちの昭和初期から、イス式の普及はそれほど進みませんでしたが、イス式の“応接間”と、床座式の“茶の間”を併せ持った住宅が普及し始めます。

しかし戦争がはじまると、再び床座式にせざるを得ない状況となります。

ユカにモノを置くと、様々な弊害が生まれます。
衛生面や健康面での配慮がユカ座に対して危惧された時代がありましたが、それらは床置きのほうへ向けられるべき心配かもしれません。

なぜ床に物を置くといけないのか。習慣…慣れは怖いですね。

この頃の日本人の体格

~わたしが子供の頃、戦争資料館に展示されていた、兵隊さん用のベットを見て「ちっちゃいな」と思った記憶があります~

世界大戦中の日本人の平均的な体格は、男性で身長が158センチ。

さらに戦争中の食糧難は、身体の発達にも悪影響を及ぼし、子供の平均身長が6センチも縮んだというデータが残されています。

戦後の高度成長時代

第二次世界大戦後、日本の大都市圏では深刻な住宅難が問題となりました。

その時代の日本住宅公団は、新しい住宅供給に際し“ダイニングキッチン( 台所兼食堂 )”を登場させました。

ダイニングキッチンを備えた公団住宅は、時代の最先端をいく生活空間として入居希望者が殺到。

ここで誕生したテーブルとイスによる食事スタイルは、その後の日本の食事スタイルを大きく変えることとなりました。

昭和36年生まれの、キッコーマン醤油さし。

日本酒を入れるトックリをヒントにデザインされました。

液だれがしにくく安価で実用的。

写真の醤油さしは、古くなって赤いキャップが欠けたた為、新たに購入したものです。
近所のスーパーでは見つからず、通販で手に入れました。

グッドデザイン賞

また、三種の神器( 電化製品では白黒テレビ、冷蔵庫、洗濯機をさす )に代表される電化製品もこの時代に普及。

このことも、イス式へ生活が変化する一助となり、テレビを中心に応接セットが人気を博しました。

我が家の長老炊飯器(現役)。
錆びていて拭いてもキレイになりません。

これも高度成長時代のものです。

当時のメードインジャパンはとにかく頑丈。

過去に3回ほど台から落としてしまったそうですが、美味しく炊けます。

窯の底には焦げたあとがあります。

急ぐときは窯だけ取って、ガスコンロで直接直火にかけ、沸騰したところで電気炊飯器にセットする荒技を行ったため。

オイルショック以降

1970年以降、二度もオイルショックを経験し、日本は低成長時代に突入します。

そうなると高度成長期に揃えた“応接セット”がなんだか邪魔に見えてきました。

ちまたでは「応接セットを置いたら、部屋が狭くなった」
「応接セットでは、ゆったりとくつろげない」との声があがります。

そして和室にソファーとカーペットを置く時代から、フローリングのユカに座るかたちへと大きく舵をきります。

平成から令和へ

フローリングのユカが一般的になり、和室は選択肢のひとつとして存在しています。

和がどこからで洋がどこまでなのか意識しない程、和洋混合が進んでいます。

靴をぬぐ住宅スタイルである以上、これからも日本人はイスとユカ両方の選択肢を持ちつつ、目的や年齢に応じた快適な“座る”スタイルを使い分けていくことでしょう。

さいごまで読んで頂いてありがとうございます。

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